
2018年に平昌(ピョンチャン)で冬季五輪とともに、パラリンピックが開催される韓国で、障害者への差別事件が発覚した。障害者ら100人以上を塩田や養殖場で強制的に労働させていた。朴槿恵大統領は「21世紀にあってはならない現実」と非難したが、韓国では過去にもたびたび、障害者への差別が社会問題化してきた。「塩田奴隷事件」はその一端でしかない。理由なき差別がはびこる国で、世界各国から注目される4年後の祭典は本当に開催できるのだろうか?(木村成宏)
■差別意識が根強く残る社会で開くパラリンピック
「参加者がまったく不自由を感じない大会にする」
4年後に平昌で開かれる冬季パラリンピックに関し、組織委員長はそう明言したという。
パラリンピックは、世最高の障害者スポーツ大会だ。夏季大会は1960年から、冬季大会は76年からスタートし、今年2月のソチ冬季五輪には45カ国から500人以上が参加した。単に開催するだけでなく、社会的な弱者が暮らしやすい社会づくりに貢献することも目的でもある。
だが、今年1月末に発覚した事件は、儒教社会で、李氏朝鮮王朝時代などの身分階級の伝統が残り、障害者に対する差別意識が根強い韓国社会の「暗部」を浮き彫りにするとともに、委員長の発言がいかに空疎なものだということも示してしまった。
韓国メディアなどによると、事件発覚の契機は、韓国・南西部の全羅南道木浦(モッポ)市から船で約2時間の新衣島の塩田で、強制的に働かせていた知的障害のある男性(48)と、視覚障害者の男性(40)の2人が救出、保護されたことだった。
■わずかな食事とたばこ、作業服だけの「奴隷生活」
「いい仕事がある」
知的障害者の男性は08年11月、木浦市の職業安定所で知り合った男からそう誘われた。もう一人の視覚障害者の男性は12年7月に、ホームレス生活をソウル市内の駅で、無許可の職業あっせん業者にそそのかされた。そして、2人とも塩田に送り込まれた。
塩田の経営者は、仲介業者に30万~100万ウォン(3万~10万円)を渡して2人を引き取り、塩田での作業のほか、農作業や土木・建設作業、家事などを命じた。1日3回の食事と2日に1箱のたばこ、作業服が支給されただけ。睡眠時間は約5時間。冷暖房がない倉庫での生活を強いられるなど、2人は奴隷のような扱いを受けた。
島からの脱出を3度試みたが、見かけた島民が塩田の経営者に知らせて連れ戻された。むちで打たれるなどの暴行を受けたうえ、こう脅された。
「今度逃げたら刺すぞ」
目が不自由な男性に対しては、作業を怠けているとして、角材や鉄パイプで殴打するなど日常的に暴行。知的障害のある男性は作業中に足を骨折したが、治療を受けられずに放置され、足を切断する状態にまで追いやられたという。
視覚障害のある男性が母親あての手紙を、近くの集落の理髪店に託して助けを求め、母親からの通報を受けたソウルの警察が、塩の取引業者を装って聞き込み捜査などを行い、2人はようやく奴隷生活から解放された。
韓国メディアなどによると、韓国警察庁は事件発覚後に塩田やノリ養殖場、畜舎などに対する一斉捜索を実施、失踪・家出人100人以上を発見・保護した。事業者19人が監禁や暴行、賃金未払いをしていたとして立件するなどした。働かされていた多くが知的障害者らで、未払い賃金の総額は12億ウォン(約1億2千万円)に達したという。
■障害者差別を見て見ぬふりする体質
韓国の有力新聞が2007年に「障害者差別の恥ずかしい現実」とする社説を掲載したが、そこでは障害を持つ男子中学生が体育の授業のたびに鍵をかけた教室に放置されたり、障害者の学生に教授が「単位をあげるから授業に来るな」と指示した事例などが示されている。
今回の事件では、塩田での人手不足に加えて閉鎖的な地域性が指摘されているが、社会の中に差別意識がいまなお根強く残っていることが本当の背景であることは間違いない。
例えば、住民の情報提供で、経営者は摘発されたが、孤立した離島に、送り込まれた作業員は経営者の言葉が絶対だと教え込まれ、洗脳されていた。地域の多くの住民らが見てみぬをふりをしたほか、地元警察も実態を知りながら黙認していた疑惑が出ている。
経営者の中には、捜査が迫ると、知的障害者に対し「警察がお前らを収容所送りにしようとしている。捕まりたくなかったら、山のなかに隠れていろ」と指示するケースもあったという。
こうした意識は本当に払拭できるだろうか。4年後の祭典は、韓国が障害者が暮らしにくい社会であることを世界に発信してしまう可能性さえある。
【東京】環太平洋連携協定(TPP)交渉をめぐり9、10両日に行われた日米閣僚協議は、両国の意見の相違を埋めることができずに終わった。このため、24日に東京で行われる日米首脳会談前に合意できるかどうか見通しが怪しくなってきた。
両国政府は、オバマ米大統領が来日する前に合意のめどをつけたいとの期待を示していた。中国が東アジアでの日米の影響力に疑問を投げかけていることもあり、両国は首脳会談を使って、日米同盟が引き続き強固なことを示そうと狙っている。
閣僚会議の米側代表のフロマン米通商代表部(USTR)代表は会議終了後記者団に対し、「2日間の協議である程度の進展をみたが、重要な問題で双方の立場に依然かなりの相違が残っている」と述べた。日本側代表の甘利明TPP担当相は、双方が相手側の立場を理解するようになったと語った。両者とも、いくつかの相違点で距離が縮まったと述べている。
TPPは、オバマ氏にとってはアジア重視路線への転換の象徴となるものであり、安倍晋三首相にとっては成長戦略の柱の1つとなっている。また、中国の存在感が強まる東アジアにおいて、米国の影響力の増大につながる。
日米協議の争点は、日本の農業と米国の自動車の両部門で、日本側がコメや牛肉などを保護したいとしているのに対し、米側は農業部門の全面市場開放を要求している。同じく、米国は輸入日本車に対する関税撤廃を渋っている。
フロマン代表が来日する前日の7日、日本はオーストラリアとの間で日豪経済連携協定(EPA)について大筋合意に達し、日本側はオーストラリア産冷凍牛肉の関税を38.5%から18年間で20%弱にほぼ半減させることに同意した。フロマン代表は8日来日した際、日豪EPAは日米交渉には影響を与えないだろうと述べ、日本に対してオーストラリアに示した以上の譲歩を求める意向を明らかにした。
日本の交渉団は、オーストラリアとのEPA大筋合意を受けて米国が日米交渉への姿勢を軟化させると期待した。米国とオーストラリアは牛肉などの農産物について日本市場で競合しているためで、日本は米国とオーストラリアからよりよい条件を得るために両国を競わせようとした。
米国は昨年中にTPP交渉を妥結したいと望んでいたが、交渉は現在も不透明なままだ。フロマン、甘利両氏は、オバマ氏の来日中に合意を発表することは重要でないと言い始めている。フロマン氏は10日、コメントを控えた。
日米が合意に達したとしても、まだ数千項目におよぶ関税の問題が残っているうえ、知的所有権、国有企業の改革、政府調達の開放などについても決着させる必要がある。
加えて、オバマ氏が議会から通商交渉に関する大統領貿易促進権限(TPA)、通称ファストトラック(早期一括審議)権限を付与されるかどうかについても不透明なままだ。ファストトラック権限が与えられれば、議会は法案について修正を加えることができなくなり、政府は通商交渉がやりやすくなる。
By MITSURU OBE
竹島(韓国名・独島)をめぐって日本と韓国が自国の領有を主張する広報戦を繰り広げる中、韓国のメディアが10日、ウェブサイトでの広報活動では日本の方が優れ、韓国は後れを取っていると指摘した。
日本外務省のホームページに公開されている「日本の領土をめぐる情勢」の特集ページでは、「竹島の領有権に関する日本の一貫した立場」、「竹島データ」、「竹島問題の概要」などの情報を、12の言語(日本語、英語、韓国語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、スペイン語、ポルトガル語、イタリア語、アラブ語、中国語[簡体字、繁体字])で提供。写真も掲載し、韓国が日本の漁船を拿捕したり、海上保安庁巡視船を銃撃したことなど関連する出来事も紹介した。
一方、韓国外交部が運営するウェブサイトは韓国語、英語、日本語の3カ国語のみに対応。「独島に対する韓国の立場」、「韓国領土である根拠」、「独島一問一答」、「政府発表文」、「独島関連法令」などの情報を提供しているが、対応言語が少ない点から情報発進力は大きく劣る。
また、日本外務省の同特集ページは「1951年9月に署名されたサンフランシスコ平和条約は、朝鮮の独立承認を規定するとともに、日本が放棄すべき地域として『済州島、巨文島及び鬱陵島を含む朝鮮』と規定した」とし、日本に領有権があることを強調した。
韓国のメディアは、韓国政府に対し、日本と同レベルの多言語サービスや、竹島を韓国領と表記した米国立地理情報局の資料などを積極的に活用していく必要があると指摘した。(編集担当:新川悠)(イメージ写真提供:123RF)