約40年ぶりに新規の抗結核薬が国内で承認されたことを受け、厚生労働省は、この新薬を使った治療の公費負担の是非について、厚生科学審議会の結核部会で審議する方針を固めたことが4日、分かった。結核治療は、入院費用の全額、通院もほぼ全額が公費などで賄われ、患者の負担軽減が図られている。承認された新薬について、同省は「MDR(多剤耐性)結核に対する治療成績の向上が期待される」と説明。公費で治療費を負担する場合、結核医療の基準改正が必要になるとしている。【新井哉】
結核治療の第1選択薬としては、半世紀ほど前から「イソニアジド」と「リファンピシン」が使われてきたが、1980年代から、この2剤に耐性を獲得した多剤耐性結核の患者が続出。ここ数年は、併用治療に使われる第2選択薬にも耐性を持つ超多剤耐性(XDR)結核の集団感染も国内で発生している。
新たに抗結核薬として承認されたのは大塚製薬の「デルティバ」(一般名デラマニド)。同社によると、国内では約40年ぶりの抗結核薬として、4日付で承認された。この新薬は、臨床試験でWHO(世界保健機関)が推奨する多剤耐性結核の標準治療と併用することで、多剤耐性結核に効果を示し、長期的な治療効果の改善につながったほか、従来の治療薬と6か月以上併用した場合、MDRとXDRの両方に対して死亡率を低下させる治療効果があったという。
結核をめぐっては、ここ数年、精神科病院などの閉鎖環境における集団感染が目立っている。静岡県は先月、同県内の精神科病院で結核の集団感染が起きたと発表。2年前に起きた東京都内の精神科病院(認知症病棟)の集団感染でも、初発患者を含む10人が結核を発病し、このうち3人が肺結核などで死亡している。
こうした事態を踏まえ、集団感染が起きた自治体や、結核研究所が院内感染対策のマニュアルを作成するなど感染防止に取り組んでいるが、多剤耐性結核の場合、薬剤治療では効果が不十分で入院が長期化したり、死亡したりするケースもあるため、治療成績の向上につながる新薬が求められていた。
結核医療については、通院治療は、必要な費用の100分の95を保険者と公費で負担。入院は、各種医療保険を適用された医療費の自己負担額を公費で負担している。今回承認された新薬についても、公費負担などを規定した感染症法や同法施行規則の基準に該当するかどうかを、結核部会で審議する予定。