
【グリラガン(パキスタン)】8カ月前、11歳の少女アムナさんは自分の3倍の年齢の男性に嫁がされた。自分のおじが犯した罪を償うためだった。
部族の長老たちによれば、おじは同じ村に住む別の少女をレイプしていた。パキスタンの極めて保守的な地域に普遍的な部族的慣習に従って、アムナさんと彼女のいとこ、ズルハジさん(17)は、レイプされた少女の家族に与えられた。だれもアムナさんたち自身の意見は聞こうとしなかった。
こうした「償いの結婚」は、パキスタンの法律では表向き非合法だ。しかし中央の権威がほつれている同国では、処理が緩慢で汚職がはびこる正規の司法制度は放棄され、伝統的な部族の正義(裁判)が尊重されている。
裁判所に対する信奉がほとんどない中で、これは一族の罰則として女性たちを与えるという慣習で、「swara(スワラ)」と呼ばれている。それは今なお、パキスタン北西部でパシュトゥーン人支配の部族地域で村の紛争を調停する選択肢だ。それはまた、バルチスタンやパンジャブ州の部族支配地域でも一般的だ。
アムナさんとズルハジさんの運命を決めたのはグリラガン村の長老会(ジルガ)だ。ジルガのメンバー、ムハンマド・グル氏は「人々は法律や司法制度を全く信頼していない」と述べ、「ジルガは1日で紛争を解決できる。最も容易な方法だ」と語った。
パキスタンの裁判所では、刑法上の案件は解決までに最大5年もかかるし、民法上の案件では10年かかる場合もある。
グリラガンの少女2人は、パキスタン北西部の遠隔地出身で、いずれもレイプされた少女の30代半ばの兄と結婚させられた。パシュトゥーン部族の風習やイスラム教の法律では、男性は複数の妻を持つことができる。
ただし、アムナさんは思春期に達するまで父親の家にいることが認められた。11歳という幼い年齢に珍しく譲歩したものだ。通常は極めて幼い少女でさえ、新郎の家に引っ越しを強いられ、家の奴隷として扱わる公算が大きく、性的虐待を受けたりする場合もある。
今回の一件で、アムナさんがなぜ自宅にとどまるのを許されたかは明らかではない。 しかし地元の活動家ズバイル・トルワリ氏は、このように幼い少女に絡んだ一件を当局が看過できなくなっているためかもしれないと述べた。
アムナさんとは違って、いとこのズルハジさんは既に新郎の家に住んでいる。グリラガンのジルガの前でウォール・ストリート・ジャーナルとの面談に応じた彼女は、虐待されていることはないと述べた。しかし彼女は、全て男性の長老たちが沢山つめかけた部屋の前で話すことを恐ろしく感じているように見えた。
ズルハジさんは、自分は17歳だと述べた。これはジルガのメンバーが主張していた19歳と矛盾している。アムナさんはどこかに隠されて姿を見せなかった。
スワラというパシュート語は、もともと動物の背に乗った女性を意味している。それはこの種の取引で少女たちが馬やロバの背中に乗って伝統的に引き渡される様子を示している。
この慣習は2011年11月に非合法化されたが、当局は「償いの結婚」に関する詳細なデータを記録していない。このため、それがどれほど普遍的なのか正確な実態を把握するのが困難になっている。警察当局は、共同体社会のメンバーが訴えてきた場合にのみ捜査するという。
その場合でも、彼らはそれを「償いの結婚」ではなく、「誘拐」として記録する場合がしばしばだ。
この慣習を取り締まる責任は州当局にある。
パキスタン法律・司法・人権省の高官のザファルラー・カーン氏(法廷弁護士)は、取り締まりの進展が遅いことを認めた。
同氏は「法律が変わったし、この非人間的な慣習をやめさせるのは州次第だ」と語った。
同氏はまた、「これらの慣習が行われているのはおおむね部族社会であり、スワラは文化や社会的な信条に根ざしている」と述べ、「人々が当局に訴えなければ、当局は干渉できない」と説明した。
By ANNABEL SYMINGTON