■「椎名誠のでっかい旅!ファイナル」
フジテレビ、27日午後9時
「年をとったので前みたいな激しい旅はしたくなかったけれど、重い腰を上げたら素晴らしいものに出合えました。フィヨルド、地底探検、きれいな街並み…。食べ物はおいしくて、子供たちは楽しそうな表情を浮かべている。幸せな旅でした」
アイスランドでのロケ直後の取材。日焼けした肌と引き締まった体つきは、とても70歳には見えない。
秘境での冒険をテーマにこれまで4回放送された「でっかい旅」シリーズ。アイスランドを“最後の地”に選んだ理由を、「欧州の北極圏に行きたかったのと、何年か前の調査で『世界で一番幸せな国』といわれた国を見てみたかった」と語る。
今回も観光地にはあえて行かず、大陸プレートの境界で「地球の裂け目」と呼ばれるギャウや、世界でも珍しい火口内部に降りられる休火山、フィヨルドなどを訪問。アイスランドでしか見られない風景を目の当たりにし、「一生に一度きりの光景だった」と振り返った。
19世紀の仏作家、ヴェルヌの「地底旅行」に大きな影響を受けたという。「ヴェルヌが好きでよく読んでたら、僕も作家になっていた。アイスランドは『地底旅行』の舞台でもある。ヴェルヌの感覚に近づける、貴重な体験ができました」
これまで70以上の国・地域を訪問。旅先では必ず「小石集め」をするという。「お土産に、その地域にしかないような石ころを1個拾って帰るんです。石の数が僕の旅を数えてくれる。少女めいているけどね」
南米・パタゴニアを馬で闊(かっ)歩(ぽ)したり、アマゾン川をいかだで下ったりと、冒険を重ねた。「でも、今は旅をしていても『3匹の孫』が頭をよぎるね。1カ月離れると、もう悲しくて悲しくて…。今後は小さい旅をして、静かな余生を送りたい」と、孫3人を思う「おじいちゃん」の顔ものぞかせる。
ただ、そう語った後に「パタゴニアには行きます。あとキルギスとシッキム(インド北東部)も行きたい。あとは…」。ひょうひょうとした語り口はエッセーから伝わるイメージ通りだったが、旅のことを語る「シーナさん」はやはり格好良かった。
(本間英士)
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<しいな・まこと>昭和19年生まれ。東京都出身。月刊誌「本の雑誌」創刊に携わり、同誌に掲載された「さらば国分寺書店のオババ」でエッセイストデビュー。代表作に「哀愁の町に霧が降るのだ」「あやしい探検隊」シリーズなど。ドキュメンタリー番組にも出演し、写真家としても活躍。旅先でおいしかった食事は「モンゴルの羊料理」。