三陸に本格的なワイナリーを作ろうと昨年5月に立ち上げた「Three Peaks Winery(スリー・ピークス・ワイナリー、大船渡市盛町」でこの春、約4ヘクタールの畑にブドウの木約650本の作付けを済ませた。(三陸経済新聞)
代表の及川武宏さんは大船渡生まれで大学までサッカーを続けたスポーツマン。元日本代表の小笠原満男さんと同級生で、一緒にボールを追いかけた仲だ。海外生活の後、東京でコンサルタントの仕事に就いていたが、震災を機にソフトバンク社長の孫正義さんが設立した復興支援団体「東日本大震災復興支援財団」に籍を置きながら、被災地の子ども支援に携わってきた。子ども達がトップレベルの指導を受けられるスポーツアカデミーのようなプロジェクトも立ち上げた。
「ワイナリーの創業を考えていたのは、10年ほど前から」と及川さん。「長期滞在していたニュージーランドのバックパッカー向け宿泊所で、おいしいワインも作っていて、それを目当てに世界各地から若者が集まってきていた」と事業を始めるきっかけを振り返る。
昨年からは、生まれ育った大船渡に畑を借り、これまでにシャルドネなど主に白ワイン用のブドウの苗を作付けした。県内のワイン工場で修業も積みながら、同じリアス式海岸を抱えるスペインへ研修に行くなど、一歩一歩夢のワイン作りに近づいている。
「高尾山のように、外国人が集まるようにと地域のポテンシャルが変わることがある。三陸もそうなればいいと思う」とし、「ブドウの木を育てたり酒造免許を取得したり、ワインができるようになるまではあと3~4年はかかるが、その時までに外国人が泊まれる施設を整え、三陸の人たちにも海外の風を浴びられる場所にしていきたい」と意気込む。「夢を追いかける人が集まる場にもなれれば」とも。
現在は、陸前高田のリンゴ農園を借り受けながら、リンゴや果汁100%のリンゴジュースの販売が中心だが、来年には醸造工場の建設も始める予定という。本格的なワイナリーの操業に向けて余念がない。