
【北京】中国はしばしば世界に向かって声を大にして発言しているとの印象を受けるのは、その節目がやって来たことを確信する国の強い自信の表れだ。
これは、特に2008年の金融危機で米国が衰退し同国の時代は早くも終わってしまったとの考えが中国に根付いた時から言えることだ。中国はこの考えから新たな自己主張を強め、周辺国の間では、中国はその増大する力をどのように使うつもりなのかという不安視する見方が強まった。
しかし、この数日間、多くの中国人が乗ったマレーシア航空機の行方不明問題を頂点とする一連の出来事によってより重要な疑問が明確になってきた。中国は高まりつつある脆弱さにどう対処するのか、という疑問だ。
これは国内でのテロ、民族問題、社会不安から世界最長の陸上国境沿いの近隣国との諸問題に至るまで、全てのことに当てはまる。これらのことは非常に複雑な安全保障上の問題を構築しており、全体として見ると、中国の運命は表面的な自信とは裏腹にあまり確実ではない。
マレーシア航空機が墜落したと見られる数日前、中国南西部の昆明の駅で33人が殺されるという事件が起きた。被害者は刀で喉を裂かれたり手足を切断されたりした。当局は新疆ウイグル自治区の分離独立主義者の犯行と断定した。この結果、これまで北西部のイスラム教徒住民が多い国境地帯に封じ込められていた暴力的な反政府活動が広まる恐れが強まった。
一部のアナリストが指摘するように、これが新疆のウイグル族が漢民族支配に抵抗する、足並みを合わせたジハード(聖戦)の始まりを意味するなら、昆明の事件は流れを変える出来事になる可能性がある。
確かに、そうではないと考えるべき理由はたくさんある。まずウイグル族はほとんどが穏やかなイスラム・スンニ派であり、分離主義者のセンチメントは大体が分離した国家の創設を支持するものだ。
しかし、新疆からの暴力の拡大は、中国国土の3分の2に散らばっている少数民族に対する北京の政策の失敗を浮き彫りにしている。新疆では石油やその他鉱物の産出に沸く一方でインフラに多額の資金が投じられており、ウイグル族の間では、自分たちの土地に入り込んできた漢族に収奪されているとの反発が生まれている。
これまでのところ、新疆のイスラム反政府運動とマレーシア航空機事故とがつながっているとの証拠は何もない。ただ、飛行機が消えてしまったという不可思議な状況、それにこの飛行機に多くの中国人が乗っていたということは、中国が急速に世界に進出することによる安全保障上のリスクを示している。
中国が旅行や貿易、投資によってこれほど世界とつながっていることはこれまでなかった。しかし、経済的な利点には安保面での危険性がある。中国市民と資産は今やテロリストの格好の標的になっているのだ。
昨年、中国から海外旅行に出た人は約1億人だった。同国の企業は世界のさまざまな紛争地域で活発に天然資源の生産に当たっている。中東やアフリカもそうであり、ここではジハーディスト(聖戦士)がいる。中国はウイグル族の分離主義者はアルカイダなどイスラム過激派のいくつかとつながっていると主張する。
中国の軍事拡張の背後には、油井やその他の投資とともに中国人の生命を守ることが動機付けの一つとしてある。例えば同国は2011年に、内戦状態のリビアから建設作業員3万人を避難させるために航空機を派遣しなければならなくなった。
中国はまた、地理的な面からも脆弱になっている。米国は最も近い潜在的な敵からも広大な海によって離れていることができるが、中国は20カ国に囲まれており、その一部の政権は機能不全あるいは不安定だ。このことを痛感させる出来事が先週あった。中国の当局者が昆明事件の処理に追われる中で、北朝鮮が前触れもなくロケット砲を発射し、これが中国機のルート近くを通過したのだ。
核武装をしようとしている北朝鮮は朝鮮半島の平和に脅威を与えており、北朝鮮の経済が破綻すれば、その混乱は国境を越えて中国の工業の心臓部に流れ込んでくる恐れがある。これは中国が繰り返して抱いている恐怖の一つだ。
要するに、北京の目で見た世界は危険なほど予見不可能だ。同国の今年の軍事費が12.2%増大したこともこれによって説明できる。
中国の近隣諸国は同国の実力を強化する資金に注目している。つまり潜水艦、軍艦、ステルス戦闘機、それにミサイルなどだ。しかし、中国にとってのより目先の関心は、国内の脅威に直面する中で共産主義国家の生き残りを保証し、国境を安全なものにする軍隊をつくりあげることだ。
同国外務省の秦剛報道局長は軍事費の大幅増の説明を求められて、同国が直面する安保上の諸問題に対する世界の受け止め方に怒りを表明し、「中国の人民解放軍は赤い房を付けた槍を持っただけのボーイスカウトではない」と述べた。
ANDREW BROWNE