
■「森光子を生きた女~日本一愛されたお母さんは、日本一寂しい女だった~」
フジテレビ、9日午後9時
平成24年11月、92歳で亡くなった森光子。「日本のお母さん」として親しまれ、国民栄誉賞も受けた女優の知られざる半生をドラマ化した。
「登場人物が実際に知っている人ばかりで、不思議な感覚ですね。役と本人を重ねるというか…」
戦後の演劇界を牽引(けんいん)した劇作家の菊田一夫を演じた。森光子(仲間由紀恵)を見いだし、代表作となる舞台「放浪記」の主役に抜擢(ばってき)する。ドラマでは、森が大阪で歌手や喜劇役者をしていた26歳から、菊田らとの出会いをへて、演出家の岡本愛彦(よしひこ)(藤木直人)との結婚生活に終止符を打つ40代までが描かれる。
森を演じた仲間を「役が役だけに苦労したと思う」と思いやりつつ、「仲間さんは意外ににぎやかな人。負けず嫌いなところもあるし、森さんと似ている」と太鼓判を押す。
生前の森とは、映画やドラマで何度も共演した。初めて会ったのは20代後半のころで、「森さんは僕より20歳ほど年上。でも、当時は『3つか4つ年上かな』と思っていた」と明かす。「いつも周りに気を使う明るい方だった。マージャンも強くて負けず嫌い。何人かで卓を囲むと、僕は大体、飯を作る側になっていました」と懐かしそうに笑う。
菊田の舞台にも出演経験があり、「『舞台の上だけで芝居をされたんじゃかなわないよ』といった調子で舞台の約束を教えてもらった」と振り返る。さらに、市川崑(こん)監督作で何度も演じた私立探偵の金田一耕助は、原作者の横溝正史が菊田をモデルの一人にしたとされる。作品や人との巡り合わせに「奇妙な縁を感じますね」とかみしめるように語る。
ドラマでは、女優としての「下積み時代」だけでなく、米兵や岡本との恋愛、結婚、別離といった私生活も描かれる。作品を通して、女優と女性の間で揺れた彼女は幸福だったのか-との問いが浮き上がる。
「森さんは努力家だから、仕事と家庭を両方頑張ろうとして、重荷になってしまったのかもしれない。でも、森さんは女優として、十分過ぎるほど幸せだったのでは。森さんを見ていたから、私も最後まで仕事をやりきりたいな、と思っています」(三品貴志)
〈いしざか・こうじ〉昭和16年生まれ。東京都出身。慶応義塾大卒。劇団四季をへて数多くの映画、舞台、ドラマに出演。映画では「犬神家の一族」「ビルマの竪琴」など市川崑作品の常連。テレビではNHK大河「天と地と」「草燃える」などに出演し、バラエティー番組でも活躍している。