
春の新ドラマの中でも要注目! 死者と対話ができる能力を持つ刑事役を小栗旬が演じている木曜ドラマ「BORDER」(テレビ朝日系)で、沖縄のユタ(民間霊媒師)一族の血を引くエリート検視官という難役を演じる。演技派女優への階段を駆け上がっている22歳には、演技開眼のきっかけを作ってくれた恩人がいた―。
伊集院静原作のドラマ「いねむり先生」での夏目雅子役の演技など、一気に演技派女優の仲間入りをした感がある。そのきっかけとなったのは一昨年公開のオムニバス映画「BUNGO~ささやかな欲望~」の一編、林芙美子原作の「幸福の行方」に主演してからだった。彼女にとってこの短編でメガホンを取った谷口正晃監督との出会いは衝撃だった。
「短編映画なので少ない日数で集中的に濃い撮影が続く日々で、緊張の連続。出演する側からすると楽な日がまったくない。谷口監督はそんな中でも役者に自然のままにいさせてくれる監督だったんです。撮影中には予想外のことが起きるのが常ですが、そんな時もあるがままに受け入れてくれたので驚きました」
これまでに「時をかける少女」「乱反射」などを手掛け、若手女優の演出に定評がある注目の映画監督が、彼女にもマジックをかけたようだ。
「役柄に入り込みすぎて思わず演技中に台本にはない涙が出てしまったり、歩くシーンでつまずいてしまったりしても、それを自然な形で使ってくれる。演出に“絵”になることを求めず、役者ありきの演出をしてくれるのは初めての体験でした。こういう芝居のやり方もあるんだと、安心して演技に集中することができたんです」
谷口監督の第一印象は「不思議な相づちをする人」だったという。
「すごく真面目な話をしている最中、『ウ~ア~ウ~』って声にならない不思議な相づちをするので、初めはビックリしましたが、すぐに慣れました(笑い)。それからプレゼント上手な方で、よく本やCDをプレゼントしていただきました。“これ、僕の好きな本なんだけど、間違って2冊買っちゃったから持ってきました”って。ピュアな大人の方だなって思いました」
3月8日に放送されたWOWOWのドラマ「人質の朗読会」で再会。そこでも谷口マジックを痛感したらしい。
「監督の側から演技について注文をしてくるのではなく、私の気持ちをちゃんと聞いてくれる。五感を敏感にして無意識に表れてくるまま演技しても、それを止めない。とにかく自然でいることを許してくれる。そんな不思議な大きさをお持ちの監督で、私の良いところを発見してくれるように思えて、とても頼りになるんです」
■ドラマ「BORDER」に出演中
そんな経験が女優としての意識を変えたのか。ドラマ「BORDER」でも存在感のある演技で、個性派揃いの豪華共演陣にまったく引けを取らない。
「男社会に紛れ込んだ女性という役柄ですから、遠慮しない、物おじしない人物を演じるようにしています。オフィス街でのロケが多いので、この前の昼休憩で、小栗さんや青木(崇高)さんとオフィス街でスーツ姿のサラリーマンの人たちに紛れてランチを食べたんですが、それが楽しかった」
現場の雰囲気も明るく、緊張しながらも楽しく臨んではいるが、一点だけ不満があるという。
「共演者に女の子がいなくてちょっと寂しいかも。というのは、小栗さんと青木さんがいつも何やら男同士の話をして楽しそうにしてるんです。そんな時は“またやってるな”と思いながら、谷口監督が私にしてくれたように2人のメンズトークを見守るようにしています。2人のいいところが発見できるかもしれないですしね(笑い)」
実は、このドラマの見どころのひとつは、波瑠演じる比嘉検視官と青木演じる立花刑事の小競り合い。“バカ”“ウルセー”などと小学生のような言い合いが展開される。そこに石川(小栗旬)が加わって……おそらくこんな場面で谷口監督直伝の「見守り」が生かされているはずだ。