
■ノートの細部までこだわり
中学・高校時代、誰もが一度は手にしたことのあるコクヨの「キャンパスノート」。その生産拠点のコクヨ工業滋賀(KPS)が滋賀県愛荘町にある。キャンパスノート誕生から来年で40年を迎えるのを前に5月、一般向けの工場見学コースが開設された。さっそく見学に参加してみると、作り出されるノート一冊一冊の細部に宿るこだわりが見えてきた。(文・小川勝也)
◆富士山100個分
琵琶湖の東部、名神高速・湖東三山スマートICのすぐそばにあるKPSの敷地は、甲子園3つ分の広さ。まずは、コクヨの歴史や工場の概要を映像などで“予習”する。
明治38年、創業者の黒田善太郎が大福帳の表紙作りを手がけたことから事業が始まった。富山県生まれの黒田が「故郷の誉れに」との思いで社名を「国誉」と命名。従業員には、買い手の気持ちを一番に考えた商売を徹底させた。
KPSは昭和47年、配送センターとして開設され、55年にノート製造などを開始。現在は、年間1億冊を生産する国内最大級のノート工場に。1億冊を積み上げると、富士山100個分の高さに達するそうだ。
予習を終え、工場の内部へ。カラフルなキャンパスノートがデザインされた扉を開けると、ノート製造機の轟音(ごうおん)とインクの匂い。
「製造機1台で一日5万冊のノートが作られるんです」。製造機の大きな音で会話ができないため、イヤホンを通じてアテンダント(説明役)の解説を聞く。
直径1・2メートルで伸ばすと9キロメートルになるという原紙のロールが、全長30メートルの製造機にセットされる。裁断から罫線(けいせん)の印刷、表裏の表紙の装丁まで、1分でB5判ノート120冊が完成する。
壁際には赤、青、黄の大きな筒が並ぶ。ハチの巣のようだが、これがさまざまな罫線を印刷するための「版」で、取り出して製造機にセットすると用途にあった罫線が印刷される。一角では、完成したノートを「5色パック」にする作業も進められていた。
工場内をみて歩くと、あちこちで頭上からミストが出ているのに気付いた。
「紙はデリケートなので乾燥しないよう、湿度管理をしているんです。ノートは生き物なんですよ」
◆しみ1ミリさえ
製造工程を見たあとは体験コーナーへ。まずは完成したノートの品質チェックを体験する。罫線のゆがみや背クロスのずれなどがないかどうか目をこらす。
「さてこれは?」。アテンダントが示したノートをチェックする。表紙はきれいだし、中紙や背クロスも問題ない。「良品です!」と自信満々に答えると、「ここにインク飛びがあるので、不良品ですね!」。言われてみるとしみのようなものがある。1ミリにも満たない微小な粒なのに…。
続いては装丁の強度チェック。ノートの中紙1枚だけを留め具で挟んでぶら下げ、他のページに重りをつるしていく。10キロ、12キロと増やしても中紙が破れる気配はない。20キロでついに破れたが、背クロスののり付けはしっかりしたまま。
「16キロの負荷に耐えるよう作っています」。単にのり付けを強くすると、ノートが開きづらくなる。「強度」と「開きやすさ」の絶妙なバランスが求められるのだとか。思わず感心…。
◆ヨシを原料に
地域密着型の経営を心がけるKPSでは、琵琶湖岸に生えるヨシの刈り取りをボランティアで行っている。枯れたヨシは湖の水質悪化や汚染にもつながる。このヨシを原料にしたノートも生産し、お土産として購入することもできる。
普段の仕事の必需品でもあるノート。作り手の配慮とこだわりに、何気なく使ってきたことが申し訳なく思えてきた。生産管理グループの尾本裕一課長(42)は「たかがノート、されどノート。使ってくれる人が、ボールペンでも万年筆でも鉛筆でも、気持ちよく書き込めるよう、品質の向上を続けていきたいですね」と話していた。
■コクヨ工業滋賀 滋賀県愛荘町上蚊野312。名神高速・湖東三山スマートICから車で2分。キャンパスノートをはじめ複写伝票やコピー用紙の製造も手がける。工場見学は予約制で月2回開催。所要時間は90分。1回の定員は25人。参加費100円(小学生以下無料)は琵琶湖の環境保全活動などに充てられる。予約や問い合わせは(電)0749・37・8017。