
日本医師会の医療政策会議は、日本の社会保障の在り方に関する報告書を取りまとめた。医療・介護の一体改革や、社会保障制度の機能などについての有識者の見解をまとめたもので、田中滋議長(慶大大学院教授)は、社会保障制度について、一定の所得のある人だけが対象とならないよう、低所得者を対象にした視点が求められているとした。【松村秀士】
報告書は、横倉義武・日医会長の諮問に対する答申で、▽「医療・介護の一体改革、2025 年をめざして」▽「社会保障制度の本質機能」▽ヨーロッパにおける近年の医療制度改革の動向―の3章から成る。
第1章で、権丈善一・慶大教授は、歴史や国際的な視点から日本の医療の特徴を解説したほか、医療には経済学が想定する市場モデルとは違い、診療効果の不確実性やサービスの個別性といった特性があると指摘した。社会保障制度改革国民会議の報告書も紹介した。
第2章では、田中議長が社会保障制度の成り立ちや資本主義の発達、社会保障制度の機能などを論じた。また、日本で全国健康保険協会(協会けんぽ)の保険料率が、所得の高い人が多く加入する組合健保の平均保険料率を上回る状態が続いていることについて、「保険制度の維持にとって捨て置いてはならない重要課題」と強調した。
第3章で、松田晋哉・産業医科大教授は英国やフランス、オランダの医療制度などを紹介。日本の医療情報の利活用に関しては、「諸外国に大きな後れをとっている」とし、医療制度改革では情報環境の改善が最重要課題だとの考えを示した。
各章の内容を受けて田中議長は、一定の所得のある人だけが対象となる社会保障制度では、「安定した社会の維持にとっては不十分」とし、低所得者層を対象にした視点が求められているとした。