
拉致被害者の新たな帰国につながるのか。安倍晋三首相は29日、日本人拉致問題をめぐり、日朝両政府が「全面的な再調査実施」で合意したと発表した。平成14年の拉致被害者5人の帰国から12年。「誠意ある調査に期待したい」「まだ喜べない」。家族らは全面解決に期待を寄せる一方、何度も不誠実な対応をしてきた北朝鮮に不安をのぞかせた。
「最後の機会だと思うが、ぜひ成果を挙げてほしい」。拉致被害者の安否調査で日本と北朝鮮が合意したことを受け、報道陣の取材に応じた横田めぐみさん=拉致当時(13)=の父、滋さん(81)は拉致問題の進展に強い期待をにじませた。
今年に入って、少しずつ北朝鮮には軟化の兆しが見られていた。3月10~14日にはモンゴルで、めぐみさんの娘、キム・ウンギョンさん(26)との面会が初めて実現。同月30日には日朝政府間協議が1年4カ月ぶりに中国・北京で再開した。
こうした流れを受け、滋さん、母の早紀江さん(78)は事態の進展に期待を高めていた。今月28日までのスウェーデンでの政府間協議では当初、再調査について合意に至らなかったと発表されたが、29日に安倍晋三首相が再調査の合意を発表。早紀江さんは「祈るような思いで(調査が)進行することを願っている」と話した。
一方で、横田さん夫妻は不安も感じている。14年の日朝首脳会談後、北朝鮮はめぐみさんら「死亡」と主張する拉致被害者について、偽の証拠を提出。その後、めぐみさんに関しては、偽の遺骨まで出してきたからだ。
日本政府は再調査が始まった時点で、日本独自の制裁措置の一部を解除する方針だが、滋さんは「軽いものならいいが、大きいものは動きをみてからでないと利用される恐れがある」と懸念を示した。
これまで何度も誠意のない対応をしてきた北朝鮮に、早紀江さんは呼びかけた。「どうか誠実な回答をして、みんなを元気なまま帰国させてほしい」