
さわやかな風の中に落ち着く穏やかな暖かさのある春がやって来ました。始まりとともに別れを告げる桜。僕は、桜を見るたびに日本人であることを思い出す。新しい道を決めるときいつも桜がそばにいた。そんな桜には、悲しいエピソードもある。そんな悲劇から生まれた平和を祈るワインを紹介します。
第二次世界大戦中の1944年8月5日 オーストラリア カウラの捕虜収容所から多くの日本兵が逃げ出した。
敵の捕虜になるなら死を選べ。戦時中の日本の教えだ。武器を持たない脱走兵は、当然簡単に殺されてしまった。撃ち殺される脱走兵は皆、万歳といった。
オーストラリアの人々は、そんな日本人が不思議でたまらなかったが、日本のそんな戦時中の教えを知り、悲しみ、尊敬し、手厚く葬ることにした。
友好の証として日本庭園を作り、2千本以上の桜を植えた。
オーストラリアでは、毎年10月に美しい桜が咲き、桜祭りが行われる。そんなオーストラリアのサクラと日本との友好をいつまでも思い作られたワイン。「ウインダウリ サクラ シラーズ」(参考価格3240円)。
カウラの桜がモチーフになっていて美しいエチケット。鮮やかなガーネット。かすかなバニラ、カシス、ダークチェリーの香りがある。しっかりした果実味で肉厚なボディが印象的。タンニンは穏やかで優しくじんわりとワインの余韻が口の中にひろがる。
ワインのイメージは、友情かな。初めて会うけれど、これからもお互いのことを知っていきたいから強い握手を交わす。
このワインを飲むともう少し背伸びして頑張ろうと思える。頑張っているのは自分だけじゃないんだよ。
君ならもっと先に進めるはずだよ。そう背中を押される気がする。夢を持つことの大切さ、そばで支えてくれる家族や仲間、恋人がいる。大切な人が笑ってくれるから、笑顔にさせたいから頑張るんだ。支えてくれる君がいるから頑張れるんだ。
当たり前のことを僕たちは忘れてしまう。そんな大切な気持ちを思い出させてくれるワインだ。
やわらかであたたかなこのワインにたくさんの人にふれてほしい。さくらを見るたびに僕はこのワイン、サクラの悲しいエピソードを思い出す。
ワインは、あなたの大切な人、家族、仲間。これから、大切な人になる人々。そんな人達と分け合いながら飲むお酒だと思います。
僕の選んだワインが、あなたの幸福の一つになりますように。
■吉原竜之介(よしはら・りゅうのすけ) 1988年4月26日茨城県出身。20歳の時にワインに魅了される。サントリーの子会社でバーテンダーを経験し、ヨーロッパへ。2012年でソムリエ試験に合格し、本格的にワインの道へ。自分で選んだ選りすぐりのワインでワイン会を開催。現在は東京・銀座のシノワで勤務中。