■ソフトバンクは5年1.45%
個人向け社債の発行に踏み切る企業が増えている。安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による景気回復などを背景に企業の資金調達の需要は高まっており、ソフトバンクや楽天、東芝などの有力企業が相次いで社債発行に踏み切っている。個人向け社債は国債などよりも金利が高く、個人投資家の人気を集めている。(佐藤裕介)
◇
ソフトバンクは、昨年6月と今年5月に、それぞれ4千億と3千億円の個人向け社債を発行した。社債の一部を販売したSBI証券によると「インターネットで販売した分は、2回とも売り出しから数分以内に完売して“瞬間蒸発”した」という。
個人向け社債には、国債などよりも相対的に利率が高く、企業が債務不履行に陥らない限りは、株式などよりも元本割れのリスクが低いという利点がある。一方、発行する企業側にとっても、M&A(企業の合併・買収)などで資金需要が高まる中、資金調達手段の多様化が図れるメリットがある。
調査会社のアイ・エヌ情報センターによると、平成25年度の個人向け社債の発行残高は過去最高水準の4兆5991億円に上った。
東芝は2日、個人投資家向け社債を300億円発行すると発表。楽天は6月、同社初の社債として、個人向けに200億円分を発行した。
個人投資家を呼び込もうと社債に賞品をつける企業もある。3月に全面開業した日本一高いビル「あべのハルカス」を運営する近畿日本鉄道は今月9日、300億円の個人向け社債の発行を発表。「あべのハルカスボンド」の愛称を付け、抽選で合計600人にハルカスにある「大阪マリオット都ホテル」の無料宿泊券などを贈る。
大和証券の大橋俊安金融市場調査部長は「M&Aなどで資金需要が旺盛な企業にとって、個人投資家をターゲットにした社債は有用だ」と指摘。その上で「個人投資家のニーズもあり、今後も個人向け社債の発行は拡大する可能性がある」としている。