
昨年末、NHK紅白歌合戦に初出場したアイドルグループSexy Zoneの中島健人主演映画「銀の匙 Silver Spoon」(吉田恵輔監督)が公開中だ。荒川弘氏の同名人気コミックを実写映画化。北海道の農業高校を舞台に、酪農の現場をリアルに描いたドラマ。中島は「僕らは自分の生きる場所を探し、命をいただいて生きている。同世代や若い人たちの教科書のような作品になれば」と力を込めた。(橋本奈実)
主演映画は2作目。「役柄と自分が重なりました。競争社会で、自分の生きる場所や夢をどう見つけるかを悩むところが」
進学校についていけず、受験に失敗した八軒(はちけん)(中島)は北海道の農業高校に入学、初体験の酪農実習と馬術部の部活動に四苦八苦する。農業の理想と現実に葛藤しつつ、仲間と絆を強め、命の大切さを学び…。
中島は幼い頃、自分をうまく出せない時期もあったという。中学2年の時に「自分の存在や力を周囲に見せ、何かをやり遂げたい」とジャニーズ事務所入り。が、ジャニーズJr.時代は、同期がみんな受かった舞台のオーディションに自分だけ落ちたこともある。
「あの悔しさや劣等感、心の闇を役に投影できたと思う。僕は応援してくれる皆さんの声が頑張る原動力でした。八軒も徐々に、人とつながっていく」
約1カ月半、北海道で撮影。「東京は時間が早回しに過ぎる。それも刺激的だが、大自然の中でゆっくり過ぎる時間に身を置き、自分を見直すのもいいなと思った」と振り返る。
撮影前には乗馬の練習や約1週間の酪農実習も体験した。早朝乳搾りをし、昼に乗馬の練習、夕方再び乳搾りという日々。「酪農をしつつ、役作りをする工程が楽しかった」
作中、主人公たちの実習の一つとして、食肉解体の場面がある。実際に大学で研究の一環で行われた現場にカメラを入れ、生徒役の出演者たちが見学するというドキュメンタリー風の撮影だった。
「命をいただいているのだから、おいしくいただくことが恩返しだと改めて思いました」。牛乳1パックを作るため、どれだけの工程を経ているかを考え、感謝するようにもなったという。
「引き出しが増えた。幼い頃から習うピアノと同等の武器になった乗馬は趣味で続けたいし、馬でライブに登場もしたい」
今月20歳になった。アイドル、俳優、現役の大学生とさまざまな顔を持つ。「すべてを高めていくのが理想。憧れの俳優は、幅広い役を演じる山田孝之さん」。今作で共演した黒木華(はる)が23歳でベルリン国際映画祭で「銀熊賞」を獲ったことも刺激になった。
「銀の匙に銀熊賞、銀づいてますよね。ソチ五輪では男子ジャンプの葛西紀明選手も銀。僕は銀色の携帯に買い替えた(笑)。今年は銀づくしでいきます」。クリアな輝きからいぶし銀まで姿を変える銀は、彼の理想に似ている。