2014年6月27日、中国ドキュメンタリー映画「収容病棟」が今月28日、日本公開される。四川省の精神病院で患者の日常に密着したワン・ビン(王兵)監督。「心を病んだ人々の、人間的な愛を描きたかった」と語る。
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文化大革命前の反体制狩り“反右派闘争”を描いた「無言歌」(10)、中国最貧地域の村を映した「三姉妹 雲南の子」(12)など、中国ドキュメンタリー映画界を代表する一人であるワン監督。最新作の「収容病棟」(13)は、四川省の精神病院が舞台。撮影制限を一切受けぬまま、患者たちのありのままの姿を活写した。
中国で精神病院にいる人の多くが「家族に見捨てられた人たち」と話す監督。当初撮影を希望した北京の病院で、亡くなった患者について尋ねると看護師は一様に驚いたという。「そんなことを聞く人はいなかったから。生きているか死んでいるかなんて、彼らにとってどうでもいいことだった」と振り返る。
北京の病院では撮影を拒否されたものの、四川ではすんなり受け入れられた。対象と適度な距離を保ちつつ、日常の姿を映し取るスタイルが貫かれた。監督は「この作品を撮るまで、精神病院や患者の実態は私もほとんど知らなかった。患者と毎日過ごすうち、彼らの家庭環境、入院した理由など少しずつ分かってきた」と話している。「収容病棟」は6月28日、シアター・イメージフォーラムほかで全国順次公開。(文/遠海安)