ミンダナオ和平をめぐるフィリピン政府などとの協議のため広島市を訪問した、同国のイスラム過激派組織の最大勢力MILFのムラド・イブラヒム議長(65)に展望などを聞いた。
--今年3月に比政府と包括和平合意に署名した
「合意は実施されなければ意味がない。私たちはアキノ大統領の任期が終わる2016年までにバンサモロ自治政府樹立などの合意事項の確実な実行を求める。次の大統領が消極的になることを懸念しているためだ」
--今後の課題は
「和平の実現には『正常化』が欠かせない。MILF兵士らを武装解除して元の暮らしに復帰させ、武器を管理し、治安も確保する。努力と強力なパートナーシップと忍耐を必要とするし、資金援助も重要だ」
--国際テロ組織アルカーイダとの関係が指摘される「アブサヤフ」や、MILFから分派した「バンサモロ・イスラム自由戦士(BIFF)」といった、武装闘争を続ける他の組織の和平合意への立場は
「BIFFは様子見の構えだ。アブサヤフの一部は合意を支持していないが、住民からの支援が断ち切られれば、武装放棄を余儀なくされるだろうと考えている。政府と和平合意を結んだモロ民族解放戦線(MNLF)にも合意に反発する勢力が存在する。和平合意は彼らのためでもあると説明して説得に努めている」(田北真樹子)