インドは児童労働の規制強化に乗り出す方針だ。5月に就任したナレンドラ・モディ首相率いる国民民主同盟政権は、児童労働法の大幅な改正を視野に、14歳未満の児童の雇用禁止などの検討を開始するもようだ。一方で、経済再建を最優先課題に掲げる同政権のもとでの改正実現を疑問視する声も上がっている。現地経済紙フィナンシャル・エクスプレスなどが報じた。
国連の国際労働機関(ILO)は、義務教育を受ける年齢の子供が教育を受けずに大人と同様に働くこと、18歳未満の男女が危険かつ有害な環境下で働くことなどを児童労働と定義付けている。インド政府の調査によると、同国は2700万人が児童労働に相当。うち1260万人が5~14歳とされる。
現行法によると、同国は自動車工場や鉱山、カーペットの製造現場など一部産業を除いて14歳未満の雇用を認めている。一方で同国は2010年に6~14歳のすべての子供に対して無償教育を保証する教育法を成立させており、同法との矛盾を指摘する声もあった。
同国労働省はこうした状況を踏まえ、1986年制定の児童労働法改正を目指し、専門委員会の設置を提言した。
具体的には14歳未満の児童の雇用禁止のほか、14歳以上18歳未満の年齢層でも鉱業など業務に危険性がある分野での雇用を禁じる方向で検討を進めるという。また、改正法に実効性を持たせるため、定期的な現場監査などの内容も盛り込みたいとしている。
一方、こうした政府の方針に対して改正実現の可能性を疑問視する声もある。専門家は、児童労働の問題は労働、教育、社会保障など多面的に捉える必要があると指摘。経済再建を最優先課題に掲げ、政府の関与を少なくして各企業の統治機能を強化するという新政権の方針が各方面間の連携の妨げとなり、改正が尻すぼみに終わる可能性もあるとの見解を示した。
経済再建への期待を受けて発足したモディ政権だが、同国は汚職や児童労働、貧困、環境など経済とも関連する問題が多岐にわたって山積している。今後、同首相の指導力が問われる場面が続いていきそうだ。(ニューデリー支局)