中国の習近平国家主席が3、4の両日、韓国を国賓として初訪問した。北朝鮮に先立つ訪問で朴槿恵(パク・クネ)大統領と5回目の首脳会談を行い、中韓蜜月ぶりをみせつけた。中国紙は「周辺外交に新たなモデルを作った」などと絶賛するが、韓国紙は、日本や米国に対抗するために「韓国を引き込む」中国の狙いを冷静に見る。米紙は蜜月演出の背後に横たわる、中韓の思惑の違いを指摘した。
■“等距離外交”でバランスを/東亜日報(韓国)
中国のトップとして初めて、就任後に北朝鮮よりも韓国を先に訪問した習近平国家主席は、日本との歴史認識問題についてリップサービスをした。韓国では評価の一方で、「北東アジア地域での主導権を狙うもの」とする警戒論もある。
5日付の東亜日報は社説で、習主席が訪韓時にソウル大学で講演し、豊臣秀吉軍による“朝鮮半島侵略”(文禄・慶長の役)や、20世紀前半に中韓の人々が共に日本に抵抗したと述べたことに関し、「習主席は韓中が日本と戦った例だけを口にしたが、中国は壬辰倭乱(文禄・慶長の役)の44年後の丙子胡乱(清による朝鮮半島への侵入制圧)を起こし、北朝鮮を助けるために朝鮮戦争に介入するなど、韓国を煩わせた歴史も明らかにある」と指摘した。
同紙の社説は「結局、習主席は“日本叩(たた)き”へと韓国を引き込むべく、韓米同盟と韓米日共助に亀裂を入れる外交的な成果を得ることになった」と、中韓首脳会談が中国の思惑通りに終わったと指摘。その上で「韓国は戦略的ジレンマに陥ってはならない。“等距離外交”でバランスをとる必要がある」と、首脳会談の“成功”を強調する韓国政府に注文をつけた。
また、5日付の朝鮮日報の社説も、習主席が「中国が韓国を侵略、国土を蹂躙(じゅうりん)し女性や子供を連れ去った歴史については一切触れなかった」と問題視。中韓共闘の歴史だけに触れたことを「中国と日本の対立がより深刻化している状況下で韓国を中国側につけ、共に日本に対抗したいと考えているのだ」と分析した。
さらに、「習主席は今回の来韓を通じ、中国主導の新たなアジアの秩序に韓国が参加し、重要な役割を果たすよう望んでいることも明らかにした」とし、「中国の外交は現在、米国による中国包囲網を打破することにある」と韓国に接近する中国の狙いを指摘した。(ソウル 名村隆寛)
■善隣外交の模範を樹立/解放日報(中国)
中国上海市共産党委員会の機関紙・解放日報(電子版)は6日付で、国際問題や朝鮮半島問題の専門家らを集めて開いた座談会をもとに、習近平国家主席の韓国訪問に関する論評を掲載した。
今回、習氏は国家主席就任後、北朝鮮よりも先に韓国を訪問した。中国首脳の外遊は一回で数カ国を巡るのが通例だが、それも破った。専門家も今回の訪韓を「独特な外国訪問」と呼んだ上で、「中韓関係史上、新たな一里塚であり、善隣外交と定義できる。周辺外交に新たなモデルを作った」と称賛した。
政治や社会制度、核心的利益の観点からも中韓には差異が存在する。それにも関わらず、わずか2日間で12項目の協議に署名し、90項目以上の協力事業で最終決定を下した点が、周辺外交の垂範になるという。
専門家らはさらに、習氏がソウルで行った演説に着目し、「習主席は今日の世界、アジア、そして中国の“肖像”をはっきりと描いた」と褒めちぎった。
今回の訪韓で「エネルギーが注入された」中韓関係だが、両国関係の発展にはいまだに「難点」と「挑戦」があるという。専門家が指摘したのは、「北朝鮮の核問題と日本の右傾化という2つの地域の不安定要因をいかに処理するか」という点だ。
同紙は「戦略的角度から今回の訪問を観察すると、北東アジアの戦略的構造にも微妙な変化が発生していることが見いだせる。注目すべきは、習主席の訪韓と同時期に、日本と北朝鮮が微妙なやりとりを展開したことだ」と、1日に北京で開かれた日朝外務省局長級協議に高い関心を示した。
北朝鮮が拉致問題の再調査を行う見返りに、日本は対北独自制裁の部分解除を決定した。同紙は「こうした動向が北東アジアの構造に変化を引き起こさないか、中国は注意深く判定する必要がある」と主張。中韓接近に伴い、北朝鮮の中国離れが加速することへの警戒感がうかがえる。(北京 川越一)
■中韓の違い浮き彫り/ウォールストリート・ジャーナル・アジア版(米国)
米紙ウォールストリート・ジャーナル(アジア版)は9日付チャイナズワールド欄の論評記事で、中韓首脳会談について「もし中国の最終的な目標が、米国の同盟関係を乱し、アジアでの支配を崩すことならば、韓国は明らかに中国が攻勢に出る場所だ」と指摘した。
中国の習近平国家主席は、「地域のどの指導者よりも韓国の朴槿恵大統領と良好な関係を保ち、すでに5回の首脳会談を行っている」とし、日本の安倍晋三首相を嫌う面でも「共通の関心を持つ」とした。
ただ中韓の良好な関係は「安全保障の重要課題、特に、北朝鮮の核の脅威にどう対処するか」という問題では「すぐに行き詰まる」という。それは、習主席に「(米国主導に代わる)アジア太平洋地域の新たな安全保障の枠組みを追求する上で大きな挑戦を突きつける」としている。
中国は「経済的な魅力にもかかわらず、地域において戦略的パートナーが極めて少ない」。それは「中国の軍事力拡大とその意図が不信感を招いているためで、韓国国民においても同様」だとしている。その根拠に最近の韓国での世論調査を引用し、習主席の印象は極めて良いものの、「66・4%が中国を重大な軍事的脅威」とみなし、「国民の大半は有事の際は米国が守ってくれると考えている」-との結果を紹介した。
中韓首脳会談でも、共同声明で朝鮮半島における核兵器開発への反対が表明されたが、北朝鮮への名指しは避けた。北朝鮮をめぐり中韓の考え方の違いが浮き彫りになったとしている。
結局、「習主席はアジアの安保環境の変化を志向しつつ、根本的には現状の変更を望んでいない」。一方で、朴大統領も「中国との友好と引き換えに米国との防衛関係を失おうとは思っていない」という。その結果、「少なくとも現時点において、アジアの主導権をめぐる争いでは、米国に有利な状況にある」としている。(黒川信雄)
(CNN) ドイツ政府がベルリン駐在の米国大使館で情報収集活動を仕切る人物に国外退去を求めた問題で、ドイツ政府当局者は13日までに、この人物は米中央情報局(CIA)の支局長であることを確認した。
一方、米大使館は諜報(ちょうほう)問題に関する慣行に従い、コメントしないとの立場を堅持している。
ドイツ国内では最近、米情報機関によるスパイ活動疑惑が相次いで発覚。ドイツの情報機関要員や国防省職員の2人が摘発された。地元メディアによると、2人は政府文書を盗んで米情報機関に引き渡し、金銭を得た疑いがある。
ドイツでは昨年秋、米国家安全保障局(NSA)などによるメルケル首相の携帯電話の盗聴が暴露され、両国関係の摩擦材料となっていた。オバマ米大統領はこの後、同盟国におけるNSA活動の見直しを約束していた。
これらの経緯があったにもかかわらずドイツで米情報機関による新たなスパイ疑惑が表面化したことで、ドイツの米国への不信感が改めて募るのは確実となっている。多くのドイツ政府高官は米国のスパイ活動に対する失望感を表明している。
米国務省高官によると、ケリー国務長官はイランの核問題協議で近くオーストリアのウィーンを訪れた際、ドイツのシュタインマイヤー外相と会談の予定。スパイ疑惑問題も主要議題になるとみられる。
東京都日野市の河川敷で6月、会社員の堀田さとみさん(24)の遺体が見つかった事件で、警視庁捜査1課は13日、元交際相手で日野市東平山、無職、安保克容疑者(24)=死体遺棄容疑で逮捕=を殺人容疑で再逮捕した。捜査1課によると、「間違いない」と容疑を認めており、交際トラブルが動機とみている。
逮捕容疑は6月18日午前9時ごろ、同市東平山のアパート4階の自宅付近で、堀田さんの首を絞めて殺害したとしている。
同日午前10時すぎ、堀田さんから家族に「夜には帰る」と無料通話アプリ「LINE(ライン)」を通じて連絡があり、捜査1課は安保容疑者が堀田さんが生存しているように見せかけるために偽装した可能性があるとみている。